AIを本格的に活用し始めてから、コードレビューを待つ時間が5倍になりました。
米国のエンジニアリングデータ分析企業Faros AIが、本年第2四半期レポートで示した数字です。2年間、開発者2万2千人、4千余りのチームの実際の作業記録を用い、同じ組織内でAIをあまり使わない場合と多く使う場合を比較しました。処理した作業は約34%増えました。しかしレビュー待ち時間は5倍になり、週あたりのデプロイ回数は逆に約12%減りました。より多く作り、より少なくリリースしたのです。

最近、スレッドでこの数字を引用した投稿を1つ読みました。2回目の起業中の共同創業者2人が、1年間2人で「AIネイティブ企業」を運営した記録で、結論は明確です。チーム構成を従来のままにしておけば、AIで得た生産性はほぼすべて希釈されるというものです。私も大企業のIT戦略部門、CTO、コンサルティング現場で同じ光景を何度も見てきました。
1. 仕事は1日、引き継ぎに3日
企画、設計、開発、テストに分けて成果物を次の人に引き継ぐ構造は、作る工程が最も長かった時代の正解でした。今は作る区間が最も短いです。残りの時間は引き継ぎ、待ち、調整に使われます。ある人がAIで1日で終わらせても、次の人の手に渡るまで3日かかれば、それは結局3日かかる仕事です。
国内企業にはここにもう1層あります。決裁ラインです。担当者が午前中にAIで報告書の草案を仕上げても、チーム長、室長、本部長の決裁を経れば1週間が過ぎます。これを私は「引き継ぎコスト」と呼んでいます。AIは作るコストをほぼゼロにしましたが、引き継ぎコストは1円も削減していません。むしろ作る量が増えた分だけ、引き継ぎ区間の前で列が長くなりました。Farosの数字がまさにその列です。
2. 早く終わらせると損をする構造
従業員の視点から見るとより鮮明です。全工程の1マスだけを担当する人が、AIで自分の担当を半日で終わらせたら何が返ってくるでしょうか? 次の仕事が与えられるか、前後の人を待つ時間だけが残ります。成果物が顧客に届くには依然として他人の手を経る必要があるため、成果として見えません。
したがって、浮いた時間を静かに温存するのが合理的な選択になります。私はこれを怠惰とは見ません。構造がそうさせているのです。AI活用率は上がったのに生産性は変わらないという悩みの答えは、たいていツールではなく仕事の単位にあります。1人が1領域を最初から最後まで担当しなければ、早く終わった分がその人の成果になるからです。
3. 中間管理職をなくしても終わりません
Jack DorseyのBlockは、本年3月、SequoiaのRoelof Bothaと共著した記事で、情報を上下に運び部署間の調整を行っていた中間管理の役割をAIシステムに任せると発表しました。組織を実務者、特定の成果を責任を持つDRI、直接業務を行いながら人を育てるプレイヤーコーチで再編しました。
国内企業がこれをそのまま真似するのは難しいです。人員削減が容易ではなく、職位がそのまま処遇に直結する会社も多いからです。しかし真似する必要もないと考えます。核心は管理職を減らすことではなく、誰が最後まで責任を持つかを決めることにあるからです。
むしろ注意すべき落とし穴があります。中間工程を省いたのに互いを信頼できなければ、すべての決定が再び上に上がってきます。スレッドの投稿者も同じ警告をしています。中間管理をなくしたら、代表1人が会社全体の中間管理職になったというのです。新たなボトルネックは人数ではなく信頼です。
4. 書き直すべき文書は専決規程です
だから私はAI導入を始める企業に、ツールリストよりも委任専決規程をまず開いてみるようお伝えしています。どの金額、どの範囲まで担当者が単独で決められるかを記した文書です。たいていは作るのに時間がかかり、ミスのコストが大きいという前提で書かれています。
その前提が変わりました。草案は数分で出せ、間違えば作り直せばよいのです。ならば承認なしで進められる範囲を広げ、本当に元に戻せない決定だけを上に上げるよう書き直すべきです。レビューも同様です。すべてを見るレビューではなく、何を必ず見るかを定めたレビューでなければ列は減りません。
スレッドの投稿者は、今の多くの企業を高速道路を作っておきながら料金所を1〜2レーンしか開けていない姿に例えました。実に的確な比喩です。御社は今、車線を増やしていますか、料金所を開けていますか?
このように点検してみてはいかがでしょうか。
AIで速くなった業務が顧客に届くまで、何回の引き継ぎと決裁を経ますか?
1人が最初から最後まで責任を持つ領域が定まっていますか?
承認なしで進められる範囲が文書化されていますか?
この3つすべての答えが「ノー」なら、次に買うべきものはAIライセンスではないかもしれません。
AI導入に合わせて組織と承認構造を一緒に再設計したい場合は、気軽にご連絡ください。 ノウバス AX コンサルティング